目次
建設工事の請負契約について
建設工事の注文者と口頭で契約を行うと、当事者間のちょっとした認識の違いから工事の内容や工期、請負金額などについてトラブルのもとになりかねませんし、一旦トラブルが発生するとその解決に長期間を要する例が数多く生じています。
このため、契約の内容を確認のうえ書面に記載し、その明確化を図り、後になってから紛争の生じることのないようしなければなりません。
建設業法で定める一定の事項は
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詳しくは、「請負契約書に記載すべき事項」(後掲)を参照してください。
このため、建設業に関して権威ある機関である中央建設業審議会などで建設工事の標準請負契約約款を示していますので、この約款を契約書に添付して請負契約を締結することが一般的な契約方法といえます。
建設工事請負契約の標準的な約款としては
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中央建設業審議会が示している建設工事の標準請負契約約款
(国土交通省ホームページ)
北海道では、(一社)北海道建設業協会などで取り扱っています。
技術者の配置について
建設業者は、請け負った建設工事を施工する場合、工程管理、品質管理、安全管理がスムーズに行われるよう必要な資格や技術のある主任技術者または監理技術者を適正に配置しなければなりません。
特に、公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する建設工事で、請負代金の額が4000万円(建築一式工事は8000万円)以上の工事を施工しようとする場合は、必ず工事現場毎に専任の監理技術者又は主任技術者を配置しなければなりません。
また、発注者が国や地方公共団体等で指定建設業(土木、建築、管、鋼構造物、舗装、電気、造園の各工事業)に該当する工事の場合で、工事現場に専任の監理技術者を置かなければならない時は、1級の技術検定合格者等一定の国家資格者(建設大臣認定者を含む)で監理技術者資格者証の交付を受け、過去5年以内に監理技術者講習を受講したことを示す「監理技術者講習修了証」(登録機関が発行)を有する者でなければなりません。
1 | 主任技術者を置く工事 |
建設業者は、許可区分が特定、一般を問わず、また、元請、下請を問わず、さらに請負代金の額にかかわらず、全て主任技術者を置かなければなりません。 |
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2 | 監理技術者を置く工事 |
建設業者が発注者から直接請け負った工事の施工で、下請契約の総額が4500万円(建築一式工事は7000万円)以上となる場合は、特定建設業の許可を受けていなければならず、主任技術者に替えて、監理技術者を置かなければなりません。 |
以上をまとめると次の表のようになります。
許可を受けて |
指定建設業(7業種) 土木工事業、建築工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、電気工事業、造園工事業 |
その他(左以外の22業種) 大工、左官、とび・土工・コンクリート、石、屋根、タイル、鉄筋、しゅんせつ、板金、ガラス、塗装、防水、内装仕上、機械器具設置、熱絶縁、電気通信、さく井、建具、水道施設、消防施設、清掃施設、解体 |
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建 設 業 の 許 可 制 度 |
許可の種類 |
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一般建設業 |
特定建設業 |
一般建設業 |
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営業所に必要 な専任の技術 者の資格要件 |
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元請工事における下請金額合計 | 一式工事の場合は 7000万円)以上 |
4500万円(建築 一式工事の場合は 7000万円)未満 |
4500万円(建築 一式工事の場合は 7000万円)以上 は契約できない |
4500万円(建築 一式工事の場合は 7000万円)以上 |
4500万円(建築 一式工事の場合は 7000万円)未満 |
4500万円(建築 一式工事の場合は 7000万円)以上 は契約できない |
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工 事 現 場 の 技 術 者 制 度 |
工事現場に置くべき技術者 |
監理技術者 |
主任技術者 |
監理技術者 |
主任技術者 |
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技術者の資格要件 |
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公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な工事※であって、請負金額が4000万円(建築一式工事の場合は8000万円)以上となる工事 |
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資格者証の必要性 |
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な工事※のときに必要 |
必要ない |
公共性のある施設若しくは工作物又は多数の者が利用する施設若しくは工作物に関する重要な工事※のときに必要 |
必要ない |
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講習会の受講の必要性 |
※ 1 国又は地方公共団体が注文者である工作物に関する工事
2 鉄道、道路、上下水道等の公共施設に関する工事
3 電気事業用施設、ガス事業用施設に関する工事
4 学校、図書館、工場等公衆又は多数の者が利用する施設
(個人住宅を除くほとんどの施設・工作物の工事が対象)
工事現場の労働安全について
建設工事は、他の産業に比べ、作業環境や作業方法の特性から危険を伴うことも多く、事故が発生しやすいものとなっています。
このため、建設工事業における安全管理の向上は重要な課題です。
現場での工事事故の内容をみると、ちょっとした気の緩みや認識不足による安易な判断等から、必要な災害防止の措置が取られなかったことなどにより、重大な事故につながった例が数多くあります。
悲惨な死亡労働災害事故は、残された家族へ多大な影響を及ぼします。 |
また、労働災害事故の発生は、建設業法の監督処分や道、市町村など各発注機関の指名停止措置の対象になり、経営にも大きく影響します。
建設業者の皆様は、日ごろから、現場における安全衛生教育の徹底に努める必要があります。
毎朝、下請業者を含めて、作業方法や安全対策の打ち合わせを行う等、日々の労働安全管理体制の確立に努めてください。
次の場合は、必ず安全衛生教育を実施してください。 ○新たに建設労働者を雇用したとき ○作業の内容を変更したとき ○危険または有害な作業を行うとき ○新たに職長等建設労働者を直接指揮監督する職務に就いた者がいるとき |
建設工事における安全管理については、労働災害防止の観点から労働安全衛生法など関係法令が制定されています。
建設業者の皆様は、これらの法令を守ることはもちろん、人命の尊重と建設業の健全な発展という見地から法令で定められている以上の十分な安全対策の実施や快適な職場環境の形成に努めることが必要です。
4 関係法令の遵守について
建設業に関連する法律は、次のように数多くあります。
建設業の皆様は、これらの法律を守り、適正な工事の施工に努めてください。
建設業法、建築基準法、労働基準法、労働安全衛生法、 独占禁止法、刑法、道路交通法 ほか |
法令に違反すると、各法律が定めている罰則や、建設業法による行政処分などを受け、経営を圧迫することとなります。
また、違反した企業が社会的信用を失うだけでなく、建設産業全体のイメージを大きく傷つけることになります。
例えば、独占禁止法に違反すると、公正取引委員会により審決という形で業務改善命令が出され、多額の課徴金が課せられます。 さらに、建設業法に基づく監督処分として、営業停止等の行政処分の対象となるほか、国や道、市町村に指名参加をしているときは、長期間にわたる指名停止措置がとられることになります。 |
刑法で禁じられている贈賄や談合を行った場合は、懲役や禁固刑など、より一層重い罰則が課せられることにもなりますし、社会的な信用もさらに大きく損なわれることとなります。 |
関係法令を守ることは、建設業者として最低限のルールです。 |
5 元請・下請について
○下請契約は標準下請契約約款(またはこれに準拠した契約書)で締結しましょう。
下請契約があいまいなまま工事が行われると、注文者、受注者それぞれに、次のような様々な問題が生じるおそれがあります。
下請契約の注文者(元請業者)は
○不当な支払を要求される。○工事が工期内に出来上がらない。 ○工事に不良な部分があっても、補修してもらえない。 |
下請契約の受注者(下請業者)は
○正当な請負代金を請求できなくなる。○請負代金が長期の手形になる。 ○支払条件が不適切なものとなるなど経営を圧迫され、 大きな支障が生じる。 |
このようなことから、下請契約当事者間のトラブルを防ぐためには、建設工事標準下請契約約款または、これに準拠した内容の契約書で契約をすることが必要です。 |
○下請契約の代金支払は適正に行いましょう。
下請契約の当事者である注文者と受注者は、対等な立場で、合意したことに基づき、公正な下請契約を締結し、契約に定められた条項を誠実に履行しなければなりません。
下請契約の注文者は、受注者に対する請負代金の支払方法等について次のことを守ってください。
下請契約の注文者が下請代金の支払方法について守るべきこと
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6 一括下請負について
注文者は、必要とする建設物を、一般の商品のように、いくつかの完成した製品の中から選択するということができません。
そのかわり注文者は、建設業を営む数多くの業者の中から、施工技術、資力、信用などを慎重に考慮して、請負業者を選定しています。
請け負った建設工事を一括して他の建設業者に請け負わせ、この工事に関与しないとしたら、その業者は注文者の信頼を裏切ることとなります。
また、一括下請負は、
○ | 建設工事の施工上の責任の所在が不明確になること。 |
○ | 不合理な利潤が取られ、この結果、実際に工事を施工する業者の経営が圧迫され、受注者や現場で働く労働者の労働条件が不利なものとなりがちであること。 |
○ | 自らは何も工事を行わないで、手数料を搾取する商業ブローカー的不良建設業者の輩出を招くこと。 |
など、建設業の健全な発展を阻害する様々な弊害が伴います。
そこで、建設業法は、原則として、一括下請負を禁止しております。
では、どのような場合、一括下請負となるのでしょうか。
元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与(注)していないときは、一括下請負となります。
一括下請負の事例
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(注) |
「実質的に関与」とは、元請負人が自ら総合的に企画、調整及び指導を行うことをいい、具体的には、元請負人が、施工計画の総合的な企画、工事全体の的確な施工を確保するための工程管理及び安全管理、工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理、下請負人間の施工の調整、下請負人に対する技術指導、監督等をしていることをいいます。工事現場に技術者を置いているだけではこれに該当せず、また、現場に元請負人との間に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれない場合には、「実質的に関与」していることにはなりませんので注意してください。
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○施工体制台帳、施工体系図を必ず作成しましょう。
建設業法では、特定建設業者が元請となり、下請契約の請負代金の額が4500万円(建築一式工事にあっては、7000万円)以上となる場合は、施工体制台帳を作成し工事現場ごとに備えおき、かつ、施工体系図を作成し工事現場の見やすい場所に掲げることになっています。
なお、北海道発注の建設工事については、請負代金額が200万円以上の工事及び200万円未満であっても下請契約を締結する工事は、施工体制台帳を提出することとしています。
7 雇用労働条件について
建設業者は、建設労働者の雇用労働条件の改善のため、安定した雇用関係の確立や建設労働者の収入の安定等を目指し、少なくとも次の事項を実現するよう努めなければなりません。
雇用・労働条件
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安全衛生
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福祉
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福利厚生施設
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雇用管理
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8 建設業退職金共済制度について
建設業退職金共済制度は、建設現場で働く人たちの退職金制度です。
現場で作業する人たちが、全国どこの現場で、いつ働いても、日数分の掛金が全部通算され、建設業の仕事をしなくなったとき退職金が支払われるしくみとなっています。
建設業の事業主が共済組合と退職金共済契約を結んで、建設現場で働く作業員を被共済者として共済手帳を交付し、働いた日数は全部通算できるようになっています。
例えば、作業員がつぎつぎと現場を移動し事業主が変わっても、そのさきざきで共済証紙を貼ってもらい、働いた日数は全部通算されるようになっています。
掛金は、税法上損金または必要経費として扱われます。
建設業退職金共済事業支部に用意してある申込書に必要事項を書き込み、提出するだけで会費や手数料は一切不要です。
詳しくは、建設業退職金共済事業北海道支部にお問い合わせするか、同制度を紹介しているページをご覧ください。
問い合わせは
住所 札幌市中央区北4条西3丁目1 北海道建設会館内
電話 011-261-6186
9 建設業法令遵守ガイドラインについて
建設業における元請負人と下請負人との関係に関して、どのような行為が建設業法に違反するかを具体的に示すことにより、法律の不知による法令違反行為を防ぎ、元請負人と下請負人との対等な関係の構築及び公正かつ透明な取引の実現を図ることを目的として、「建設業法令遵守ガイドライン(第10版) 」が策定されておりますので、業務にお役立てください。