函館稜北病院
2022.11.04 記事
- プロフィール
- 青森県八戸市出身
2020年3月 旭川医科大学医学部を卒業
2020年4月 勤医協中央病院 初期研修開始
2022年3月 勤医協中央病院 初期研修修了
2022年4月 函館稜北病院 総合診療科 - 趣味
- 釣り、アイスホッケー
- 座右の銘・モットー
- 君の芝生は緑、青じゃなくていい
高校、大学時代は勉強を忘れてアイスホッケーに熱中していた石谷先生。今もまたチームを作って、やりたいと企んでいるそうですが、「アイスホッケーのおかげでメンタル面には自信があり、辛い時でももうひと踏ん張りが利きます」とニコニコと話してくれました。医師3年目で新しいことも増え、忙しい日々を過ごしているようですが「函館稜北病院では休みはしっかり休めているのでQOLは高く、夏休みも知床まで足を延ばして釣りを楽しみ、プライベートも充実している」と話す石谷先生にお話を伺いました。
総合診療科に決めた理由
高校生の時にNHKの「ドクターG」を見て総合内科や診断学に興味を持ったことがきっかけですが、初期研修の時にはけっこう迷っていました。でも、患者さんの病気だけじゃなくて、御家族含めて問題解決していくところや、専門科の医者ではできない患者さんへの関わり方ができるのも総合診療科のいいところだなと思い、自分に合っているなと感じました。
特に、函館稜北病院に来てから、患者さんに対する指導医の先生方の接し方を見ていると、医療に人間味を感じることがすごくあって、色んな問題を抱えている患者さんが居たり、御家族が受けとめ切れていないケースとか色々あるんですが、その人が大事にしていることを尊重して、ちゃんと折り合いながら医療をやっているように感じます。医学的な正しさとは別の視点を持っているというか、大学ではそこまでのことは教わらないので、やっぱり現場を見て、知るって大事だなと思います。
患者さんの暮らしを見ながらの医療は総合診療医ならでは
日常的な診療では病棟、外来、訪問診療を同時期に研修できるので、それぞれのセッティングで患者さんの姿が違い、それぞれに応じた対応が求められるので、難しさはありますが、総合診療医として幅の広い研修ができています。
その中でも訪問診療では、普段の外来では見られない患者さんの姿が見られるので、非常に学びになっています。例えば、病院にはいつも夫婦で来ていて旦那さんは全く喋らないで奥さんばっかり喋っているのに、訪問診療で伺ったときには旦那さんのほうがよく喋るとか。普段病院では車いすだけど、家では歩行器を使っていて歩く姿を初めて見たとか、家の飾りや趣味でその患者さんの暮らしや性格面なんかも見えてくるので、そういった気づきの中で生活丸ごと考えながら治療を考えていくというのが、総合診療医ならではのおもしろさかなと思います。
総合診療医として感じる成長
社会的なサービスや医療資源の知識がついてきて、患者さんに対して適切な支援を提案できるようになってきたなと感じます。例えば外来で「最近家事が大変なの」という話がポロっと出れば、じゃあ包括支援センターに相談してみましょうかって、すぐにつなげるべき支援を思いつくかどうかって大切なんですよね。
医者として直接患者さんに医療を施せるのは当たり前なんですが、世の中にある支援やサービスを適切につなぎ合わせることも総合診療医として非常に重要なノウハウです。そのために相談員さんやケアマネさんとしっかりつながって信頼関係を持っておくということが大切です。
生活の質を向上させること
色んな医療資源を有効に使えるようになると、病気は良くならなくても生活の質を向上させてあげることができて、患者さんや御家族ってそれだけでもすごく感謝してくれるんですよね。そこが総合診療医のやりがいの一つでもあると思います。検査数値や痛みの具合は変わってなくても、「最近家事が楽になったよ」とか「おばあちゃん最近いきいきしてる」と聞くと総合診療医として人の役に立てているな、と実感します。
特に当院は今までの先生方が積み上げてきたものがあって、周りの看護師や事務スタッフが自然とそういうところに目がいくようになっていて、僕が気が付かなかったとしても病院全体として患者さんを支える風土ができていますね。
総合診療医としての将来
診断学や家庭医療学のトレーニングをしっかり積んで、自分ひとりで診療がきちんとできるようになってからとは思っていますが、将来は大きすぎない町で家庭医としてやっていくイメージを持っています。自分の生活の場として地方のほうが落ち着くというのもありますが…
地方やへき地のほうが総合診療医の需要が高いと思っていて、地域のコミュニティが小さいので総合診療医一人の役割や影響度、携われる範囲が広く、総合診療医としてやれることが多いように感じます。
理想とする医者像
医者と患者さんの間のコミュニケーションエラーってすごく多いと感じていて、医者に対して言いたいことってあまり言えてないと思うんですよね。医者である自分が眼科にかかった時でも言いたいこと言えない場面があるぐらいなので。
理想としては、やはり、医者と患者は良好なコミュニケーションのもと、対立構造ではなく横並びで一緒に治療に取り組んでいくべきだと思うので、患者さんの話をまず引き出していかなくてはいけないと思うんですよ。そういうのはテクニックじゃなくて雰囲気なのかもしれないですけど、患者さんがちゃんと言いたいことを言える、そんな関係性を築ける医者になっていきたいですね。
総合診療の難しさ
私は患者さんに対して何か役に立ちたいっていう“おせっかい心”みたいなところがあって、患者さんはただ聞いてほしいだけの話をしているだけなのに、それに反応しちゃって良かれと思って気を回したりするんですが、実は患者さんは何も求めてないとか。患者さんの本当のニーズを感じ取るということに難しさを感じますね。
病気だけ診るならあんまり気にしなくてよいことかもしれないですが、総合診療医は心理面や生活面のケアも含めて対処していかなくてはいけないので、患者さんへのかかわり方や間の置き方は人それぞれということもあって難しいですね。
指導医にいつでも相談できる環境
週1回振り返りの時間があって、分からないことや気づきを全部聞いてもらっていますし、基本的に毎日カンファレンスがあるので、治療方針やかかわり方のアドバイスなどももらえます。指導医の先生方はみんな忙しそうなんですけど、聞けばいつでも親身になって教えてくれるので心強いです。
これは個人的に感じる部分なんですが、総合診療の先生方って教えるのが好きな先生多いですし、家庭医や総合診療医を目指す先生って優しい先生も多いので、聞きやすい雰囲気を作ってくれていますね。
総合診療医に向いている人
総合診療の場には社会福祉的な問題がつきまとったりするので、患者さんの生活に寄り添って生活の質を上げるとか、地域社会の問題に興味を持って暮らしをより良くしたいという思いがある人にはすごく向いていると思います。
診断学に興味がある人もいいと思いますが、いわゆる「病気に興味がある」「人の体に興味ある」というよりは、“その人自身”に興味を持てる人は、ぜひ総合診療の現場を見てほしいと思います。
将来的な強み
将来的に地方や診療所で働きたいと考えている人には良いと思います。外来って内科全般診られないとダメだし、例えば眼や皮膚も診られないとダメという地域もあったりするので、何かを専門でやってきた先生よりも総合診療医は圧倒的に広い分野に触れる機会が多いので、将来診療所などに行きたい人にとっては強みになりますね。
また、高齢者の社会福祉な問題点にも強くなるので、サービスへのつなぎ方が分かるというところでも強みになると思います。
研修医にメッセージ
総合診療医に少しでも興味があるなら、一度は見てみるのが良いと思います。
学生時代も研修医時代も外来や入院患者さんしか見たことないけど、訪問診療に行くと患者さんがけっこう普通の暮らしをしていて、歩いていることや身の回りのことを自分でやって生活していることに驚くことが多いと思います。そういった患者さんの暮らしに入り込む医療ってなかなか見られないと思いますし、総合診療医ってまだちょっとぼんやりしているところがあって、本当のところを誤解している方もまだまだ多く居ると思うんですね。なので、実際に自分の目で見て総合診療医が診て対応する範囲の広さや深さを知ってもらうと色々なギャップに驚くと思います。
自分自身もそのギャップには驚いた記憶がありますね。
函館稜北病院での研修メリット
外来、病棟、訪問診療、全てやっているので、それぞれのつながりが切れ目なく見られるのは良いと思います。例えば、入院から訪問診療に戻った人へのサービスがどんな風に活かされているのかということが見えるので、自分としてはかなり勉強になっています。
また、川口先生が居るというのも大きいですね。色んなところに講演で呼ばれるような先生ですし、直接指導を受けられるメリットは大きいです。患者さんへの対応とか、地域医療へのアプローチが間近で見られるのはすごく勉強になりますし、刺激にもなります。