薪のプロに聞く、針葉樹の薪
札幌市内で薪ストーブと併せて薪の販売も取り扱う専門店にお勤めのストーブアドバイザーの方に針葉樹の薪について、お聞きしました。(平成27年12月16日)
薪を取り扱う
・もともと薪ストーブの販売のみだったのに、なぜ薪の販売を始めたのですか?
―当初は、薪ストーブを買って頂いていたユーザーに対して、外注したり「薪はここで手に入りますよ」という紹介したりぐらいでした。それで7年ぐらい前から薪ストーブを売る者の責任として安定提供を目指し、薪をうちで販売することによりお客様に安心して焚いて頂けるように自社でも薪の生産を始めました。最初は250㎥から始まり、毎年右肩上がりで増え続け今年(2015年)は1,300㎥までになりました。
・針葉樹の薪はそのなかで何割ですか?
―針葉樹といっても当社はカラマツだけですが、今年は50㎥ありましたので3~4%位ですね。今後はもっと増やしたいと思っています。
針葉樹の薪は大丈夫?
・カラマツやトドマツなど針葉樹の薪を焚くと、ススやタールがいっぱい出るし、ストーブにダメージを与えて良くないという話をよく聞きますけど大丈夫なのでしょうか?
―それは針葉樹の薪が悪いのでなく、扱い方が間違っていることによる誤解だと思います。まず、当たり前の話ですが広葉樹、針葉樹に関係なく薪は乾燥が重要です。
その上で針葉樹の薪は広葉樹と違う特徴を持っています。といってもそんなに特別なことではありません。正しい知識を持っていれば普通に使えます。
針葉樹の薪は火力重視
・それではまずそれぞれ特徴を教えてください
―広葉樹の薪の特徴は「おき」が長時間残るので火持ちが良いことです。ナラは特に火持ちが良くて日本では人気ですね。北欧では白樺が着火性にも優れて薪としての美しさもあって人気です。針葉樹の薪は、火付きが容易でパッと燃えますが燃え尽きるのが早い。瞬発的な火力は強いです。
これだけの話です。広葉樹、針葉樹ともにちゃんと乾燥し、正しい薪の量、空気量を入れてやればどちらも完全燃焼し、スス等も針葉樹だから多いということはありません。
火持ちにこだわるな
・では、なぜ誤解が生じているのでしょうか?
―みなさん火持ちを重視します。なので広葉樹のように長く燃やそうとして、針葉樹の一気に燃え上がる性質を抑え込み、無理矢理火を小さく長く持たせようとして空気量を絞りすぎたりする。その状態が不完全燃焼を起こしてしまうから、ススなどが大量に発生してしまうのです。
針葉樹の薪は火力が強いが火持ちしない、このことを覚えておいてください。
実際に燃やしてみた
・こちらのお店で燃やしているのはカラマツの薪ですか?
―そうです。店で燃やしているのはすべてカラマツです。今年の秋から自宅もカラマツの薪のみで生活しています。実際燃やしてみて、カラマツは火付きがいいし油分が多いから火力がすごくあります。それもあって燃焼温度が高いのですぐストーブが暖まってくれる。スタートの時は、広葉樹の堅い薪なんかよりだんぜん便利です。あと秋口や春先の肌寒いときに追加の燃焼なしの一回だけ焚く時もつかえます。
また広葉樹に比べ比重が小さいことから軽く取り扱いが楽な一方で、燃え方が早いのでナラだと2時間ほどで薪を足すところを、カラマツだと1時間半ぐらいで足さなければなりません。ただ、ここで薪を広葉樹に替えてやれば普段と同じように燃やせます。針葉樹3、広葉樹7ぐらいで両方持っておくとすごく便利だと思います。
カラマツの薪のいいところ
・カラマツの薪は安いと聞きましたが?
―薪を作るって実はものすごく手間がかかります。仕入れた原木を、ある程度の長さに切って、割ってそれから乾燥させてやっと薪になります。この切る、割る、乾燥すべての作業でカラマツは楽でした。特にいま仕入れているカラマツは人工林のものなので、まっすぐストーンと育っていますので切りやすく割りやすいです。その上カラマツは乾燥が早く、冬に伐採したカラマツだとだいたい3ヶ月ぐらいで燃やせるぐらいに乾きます。これが広葉樹だと最低6ヶ月は掛かる。カラマツは低コストで薪にできるのでその分安くなっています。自分で薪を作る方にも割りやすく乾燥しやすいのはかなりのメリットになると思います。
針葉樹の薪の注意点
・先ほど燃焼温度のお話がありましたけれども、針葉樹の薪が持つ高い燃焼温度が問題になったりしないのですか?
―そうですね、針葉樹の薪の誤解のなかでストーブが壊れるというお話しがありましたが、たしかに二重構造になっていないストーブで、設計時の想定温度を超えてしまう場合などでは壊れる原因になりますので注意が必要です。その他には針葉樹の薪だけで冬を越す場合は広葉樹より多めに薪を確保する必要がありますので、薪の置く場所をより広く確保する必要があります。
針葉樹にこだわる必要もない
・針葉樹の薪についてたくさんお話を伺いましたが、最後に薪を使っている方やこれから使おうとしている方に対して何かありましたら。
―北海道の豊富な人工林資源を有効に活用するため針葉樹の薪を使おうという意義もあるかと思いますが、多くのストーブユーザーの関心は「できるだけ安く薪を手に入れたい」という点にあるかと思います。その意味においても針葉樹の薪はお手頃な価格であり、その点今はカラマツの薪はオススメです。
ただ大前提として、私は針葉樹の薪でなければならないとか広葉樹の薪でなければならないとかはまったく思っていません。「手に入る薪を燃やす」それでいいと思っています。
今までは針葉樹がいっぱいあるのに、誤解されていて薪として使えていなかった。それが今徐々に抵抗がなくなりつつあり選択肢が広がっています。当社の薪も、ナラ、カラマツ、ミックスと選べますので自分に合った薪の使い方をして欲しいですね。
いろんな薪を使ってみて自分の生活にあったものを見つけるのも薪ストーブの楽しみ方かもしれませんね。
お話しありがとうございました。