北海道では水産資源の増大及び水産物の安定供給を図るため、国の漁港漁場整備長期計画(2022年度~2026年度、5ヶ年)に沿って、沿岸漁業の基盤たる沿岸漁場の整備を計画的に進めています。
※従来、漁場整備は「沿岸漁場整備開発事業」(1976年度~)により実施してきましたが、より効率的・効果的な基盤整備を図るため、2001年度から、漁港・漁村整備を行う「漁港漁村整備事業」と一体化し、「水産基盤整備事業」として、新たな漁場・漁港・漁村づくりを推進しています。
水産基盤整備事業(漁場整備関係)の内容
北海道で行っている漁場整備に関係する事業の取組内容は次のとおりです。
魚礁漁場の造成
魚類には住みかや隠れ家として、または産卵場、餌場として海底に隆起した部分(「〇〇堆」、「△△礁」等と呼ばれるもの)に集まってくる習性を持つものがあります。これを、「魚礁性魚種」といいます。
北海道では、このような魚種が集まり天然の好漁場となる「天然礁」の近傍に、コンクリートブロック等を設置するなどして人工的に魚礁漁場を造成し、「魚礁性魚種」の蝟集を図り、漁場の拡大を行っています。
〈北海道における主な対象種〉
ソイ類、アイナメ、カレイ類、マダラ、スケトウダラ、ホッケ、タコ類等
増殖場の造成
天然における水産動植物の繁殖を助け、または人工種苗の保護育成を図るため、主に沿岸の浅海域に様々な構造物を設置しています。
北海道では、石材やコンクリートブロックを海中に投入して海藻類を着生させ、コンブなどの漁獲、海藻類を餌とするウニ・アワビなどの生物の増加、海藻が繁茂する環境に生息するソイ類幼稚魚などの育成を図る「藻場」のほか、ミズダコやヤリイカの産卵を促す「産卵礁」、水深帯や底質の改善を行うことでアサリなどの貝類の増加を図る「干潟」などの造成を行っています。
〈北海道における主な対象種〉
コンブ、ウニ、アワビ、ソイ類、アイナメ、ヤリイカ、タコ類、アサリ、ホタテガイ等
養殖場の造成
天然の地形を利用し、魚介類の養殖を行うことが近年盛んに行われています。
北海道では、消波堤の設置などによって波の静かな水域を確保し、生産性の高い養殖場の造成を行っています。
〈北海道における主な対象種〉
ウニ、アワビ等
漁場環境の回復
生産性の下がった沿岸漁場を、堆積物の除去、底質改善などにより回復させることを目的として行っています。(北海道では市町村が実施する事業に対し補助しています。)
〈北海道における主な対象種〉
コンブ等
水産基盤整備事業(漁場整備関係)のメニュー
本事業には、漁場整備をはじめ漁港や漁業集落の整備など多様な事業メニューがありますが、漁場整備に関係する主な事業メニューは次のとおりです。
水産物供給基盤機能保全事業
漁場施設の保全工事を行う事業
目的 | 水産基盤整備事業等により施設整備を実施してきたが、近年、整備後の施設老朽化とともに更新を必要とする施設が増加しているため、計画的な取組により、施設の長寿命化を図りつつ更新コストの平準化・縮減を図ることを目的とする。 |
採択要件 | 漁場施設(増殖場、養殖場)については、当該漁場を利用している漁船の本拠地となる漁港の港勢要件が次の(1)または(2)に該当するものであること。 |
(1) | 第1種または第2種漁港であって、1港あたりの港勢が次の(ア)から(エ)のいずれかを満たすもの |
(ア) | 利用漁船の実隻数が50隻程度以上 |
(イ) | 登録漁船隻数が50隻程度以上 |
(ウ) | 陸揚金額が1億円程度以上 |
(エ) | 水産業の振興を図る上で、水産基盤の機能保全を行うことが特に必要と認められるもの |
(2) | 第3種または第4種漁港であること |
事業主体 | 施設の管理者 |
補助率 | 1/2 |
水産環境整備事業
水産生物の生活史に対応した良好な生息環境空間の創出および水域の環境保全対策として行う事業
目的 | 広域的・俯瞰的な視点をもって漁場の整備と水域の環境保全対策を総合的かつ一体的に実施することにより、水産生物の動態、生活史に対応した良好な生息環境空間を創出し、水産資源の持続的利用と水産物の安定供給に資することを目的とする。 |
採択要件 | 受益個数が200戸以上かつ、次の(1)または(2)に該当するもの。 |
(1) | 利用が広範囲にわたる規模の大きな漁場施設の整備で、(ア)または(イ)に該当するもの |
(ア) | 計画事業費が一事業につき3億円を超えるもの(※20億円超の場合は特定事業。なお、関連する複数漁場を一括して一事業とすることができる。) |
(イ) | 事業規模等が一定の要件を満たすもの |
(2) | 水産環境保全のための事業で、計画事業費が一事業につき5千万円以上(市町村、漁協等が行う事業は1千万円以上)のもの |
事業主体 | 北海道、市町村、漁協等 |
補助率 | 1/2 |
水産生産基盤整備事業
水産資源の増大および水産物の生産機能の強化を図るために行う生産基盤の整備並びに水域の環境保全対策として行う事業
目的 | 浅海域の漁場、藻場・干潟、養殖場と密接に関連する漁港の一体的な整備とともに、水域の環境保全対策を総合的に実施することにより、水産資源の維持・増大と水産物の生産機能の確保を図り、水産資源の持続的利用と水産物の安定供給体制の構築に視することを目的とする。 |
採択要件 | 次の(1)または(2)に該当するもの。 |
(1) | 浅海域における漁場、藻場・干潟、養殖場と、当該漁場等に密接に関連する漁港における漁港施設(水産資源の増殖機能付加含む)を一体的に整備する事業で、(ア)または(イ)に該当するもの |
(ア) | 計画事業費が一事業につき3億円(漁港施設の整備が含まれる場合は5億円)を超えるもの |
(イ) | 事業規模等が一定の要件を満たすもの |
(2) | 養殖場を含む水域の環境保全のための事業で、(ア)または(イ)に該当するもの |
(ア) | 計画事業費が一事業につき5千万円以上(市町村、漁協等が行う事業は1千万円以上)のもの |
(イ) | 事業規模等が一定の要件を満たすもの |
事業主体 | 北海道、市町村、漁協等 |
補助率 | 1/2 |
地域水産物供給基盤整備事業
水産資源の維持・増大を図るため、共同漁業権内およびこれに隣接する水域における漁場施設の整備を行う事業
目的 |
水産資源の回復、漁場等の保全、漁村の振興といった水産業をめぐる主要課題に対して、資源管理型漁業、つくり育てる漁業の一層の推進を図るとともに、水産物の生産性向上等のため、共同漁業権の区域内等地先の漁場と、当該漁場と密接に関連する第1種漁港等を計画的かつ一体的に整備し、地域における水産資源の維持・増大と水産物の生産流通機能の向上を図り、国民のニーズに的確に対応した水産物の安定供給と漁業地域の活性化に資することを目的とする。 |
採択要件 | 次の(1)および(2)に該当するもの。 |
(1) | 計画事業費が一事業につき3億円を超えるもの |
(2) | 漁場施設を整備する場合は共同漁業権内(原則同一市町村内)の登録漁船隻数が100隻程度以上 |
事業主体 | 北海道 |
補助率 | 1/2 |
用語解説
・共同漁業権
漁業権の一つで、一定の水面を共同利用して漁業を営むことができる権利をいう。他の漁業権としては、定置漁業権(定置網を営む権利)と区画漁業権(養殖業の権利)が設定されている。
・増殖
天然水域の生産力・回復力を利用しつつ、水産物の生活環境を直接・間接的に管理し、繁殖や生育を促す方式をいう。
・養殖
一定の水域を占有して、自己所有する水産物の育成を行う方式をいう。
・第1種漁港等
漁港漁場整備法(旧漁港法)に基づき、利用範囲により第1種から第4種に区分されている。利用範囲は、第1種が「地元漁業」を主とするもの、第2種が「近隣地区を含むやや広い範囲」、第3種が「全国的利用範囲」、第4種が「離島その他辺地にあって漁場の開発・避難上特に必要」なものと規定されている。