農業研究科(試験研究だより3 「肉眼観察によるトマトの栄養障害診断法」)

 

● 試験研究だより ●

農業研究科

 
肉眼観察によるトマトの栄養障害診断法
 
 「トマト」は、夏を代表する野菜です。近年は甘い完熟品種が主流で、ヒトの健康を維持する成分「リコピン」も多く含まれてます。農家では高収益作物として栽培されています。ご家庭でも美味しさを楽しみつつ健康増進を図って頂きたいものです。
 原子力環境センターでは、トマトの栄養障害について試験を行い、写真を取り入れた栄養障害診断法の冊子を作成し、町内の農家に配布してきました。今回は、その中からトマトが大量に必要とする肥料成分が欠乏したときの症状3例を紹介します。
 
 
1.チッソの欠乏

 チッソは作物体内で移動し易い成分です。欠乏すると古い葉から新葉へと移行するため、症状は古い葉から生じます。1.葉の全面の黄化、2.葉脈の暗紫色化の他、3.生育の著しい抑制が特徴です。
 チッソ欠乏は、1.収穫時に灌水を打ち切った場合、2.長期間無追肥で育苗した場合、3.未熟な稲わら等を多量に施用した場合に発生することがあります。
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チッソ欠乏:下の葉から順次上の葉へと葉全面が黄化する。
 

2.カリウムの欠乏

 カリウムも体内で移動し易い成分で、欠乏は中位の葉から現れます。症状は、1.葉の先端や葉縁のみの黄化、2.葉の内側(葉脈以外の部分)の黄化と黄化部位の隆起と裏側への湾曲、葉縁の枯死、3.葉柄や茎での壊死斑の発生と進みます。
 カリウム欠乏は、砂質の土でカリウム濃度が低いと生じやすくなります。
 土壌のカリウム含量が適量であっても、1.マグネシウムやカルシウムが蓄積しているハウスや、2.急激に肥大している果実周辺の葉でも欠乏することがあります。マグネシウム等はカリウムの吸収を抑制する成分ですし、果実が肥大する時に果実周辺の葉からカリウムが果実に移動することが原因です。


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カリウム欠乏:中位葉の先端から黄化し、葉縁は次第に黄化枯死する。
 

3.マグネシウムの欠乏

 マグネシウムは葉緑素の構成成分です。欠乏すると葉緑素の生成が抑制され、葉の黄化や壊死斑が発生します。
 マグネシウムも体内で移動し易い成分で、欠乏症状は下の葉から発生します。
 生育初期では、下位葉が黄化し、やがて紫紅化しますが、葉脈は緑が残ります。黄化は次第に中位葉へ拡がり、果実の肥大時に顕著となります。
 マグネシウム欠乏は、マグネシウム吸収を阻害するカリウムやカルシウムが蓄積しているハウスで見られます。

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マグネシウム欠乏:下の葉の葉脈間が葉先から黄化し、葉脈付近は緑色が残る。
 
(北海道原子力環境だよりVol.61 2001.12抜粋)

 



 
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