●試験研究だより●
海藻のはなし2
○内湾のアマモと荒磯のスガモ
前回(55号)触れたように、沿岸の海底に生える大型植物のうち、コンブやワカメのような「海藻」は付着器で岩に張り付き、栄養分は体の表面から直接取り込んで成長するため、岩盤が露出した岩場が分布の中心となります。
これに対して「海草」であるアマモやスガモは根・茎・葉を持ち、地中に根を張って体を支えるため、砂地あるいは砂混じりの岩場が主な生育場所となります。 ただ、同じ海草でも、アマモが内湾や流れの穏やかな河口域や海水と淡水が混じり合う湖などに群落を作るのに対し、スガモは外洋に面した波の荒い磯や岩混じりの砂浜に多く見られます。
これらの海草は地中の栄養分を根から吸い上げて利用することができるため、海水中の栄養分が少なくなりコンブ類や植物プランクトンの生産量が落ちる夏場にも成長を続けることができます。
また、砂の中に根を張ることで流動しやすい底質を安定させ、さらに水の汚れを浄化する働きも持っています。
砂地の中に張る海草・スガモの根。スガモは北海道では「ゴモ」「ゴモクサ」などとも呼ばれて言います。
(泊村・茅沼 水深4m)
○海草藻場に棲む生き物
それでは、その海草の藻場にはどのような生き物が棲んでいるのでしょうか。
沿岸の浅い海には膨大な数の生物が生活しており、例えばスガモ場に棲む甲殻類に限ってみても、アミ類(一般には「イサザ」とも呼ばれています)やヨコエビ類、ワレカラ類、等脚類(陸上のダンゴムシやフナムシの仲間)のヘラムシやコツブムシ、エビジャコのような比較的小型のエビ類、海辺で遊んでいれば必ずと言って良いほど目につくカニやヤドカリの仲間など、非常に多くの種類が見られます。
生活の様子も多様で、カニの幼生やカイアシ類(コペポーダ)のカラミジンコのように浮遊生活をするもの、アミ類のように海底近くを漂うもの、ヘラムシやワレカラのように植物の上にしがみついて生活するもの、コツブムシやクーマ類・カイアシ類のソコミジンコのように、普段は浅い砂の中や石の間で生活していて時々水中に泳ぎ出すもの、ヨコエビ類のドロクダムシのように地中で生活するものなどがいます。
これらの生き物の多くは海草が光合成によって作り出した有機物を餌として利用しており、それがさらに魚類の餌として利用されることによって、沿岸での生物生産に重要な役割を果たしています。
(つづく)
(北海道原子力環境だよりVol.58 2001.3抜粋)