概要
令和4年(2022年)年7月14日(木)~15日(金)、畑地かんがい試験研究会を開催しました。
本研究会は、畑地かんがい推進モデルほ場設置事業(以下、「モデル事業」という)により行われる畑地かんがいに関する試験・調査を効果的に推進し、これに関する情報を関係者間で共有することで畑地かんがいによる水利用技術の確立とその普及を図っていくことを目的としています。
1日目は、オホーツク総合振興局講堂(網走市)で試験研究会を開催し、2日目は、同管内大空町で現地検討会を開催しました。
当日は、地方独立行政法人北海道総合研究機構各農業試験場の研究員をはじめ、北海道開発局、関係開発建設部、関係(総合)振興局、関係農業改良普及センター、北海道農政部のほか、一般財団法人北海道農業近代化技術研究センターから総勢87名が参加し、調査結果報告及び意見交換を行いました。
【主な内容】
(1)各地区報告
「網走川中央地区」の取組(オホーツク総合振興局東部耕地出張所)
(概要)
大空町は、平成27年に策定した「大空町農業振興整備計画」の中で、農業・農村における所得倍増などを目指した「農林水産業・地域の活力創造プラン」や、北海道における「北海道農業・農村振興推進計画」を踏まえ、高収益作物への転換を目指しており、その実現のために「作物構成の集約化」・「新技術の導入」を必要としている。大空町女満別地域は、網走川により形成された河岸段丘を境に、畑作や畑酪経営が主体の「高台エリア」と、水稲作付を中心とした網走川流域の「低台エリア」に大きく分けられ、本地区は「低台エリア」に位置している。低台エリアでは畑地かんがい施設は未整備であり、野菜類の安定生産が見込めないことから、高収益作物への転換が進んでいない。今後、高収益作物への転換による所得向上と経営の安定化を図るため、野菜類(タマネギ、葉物野菜)の作付面積の増加が急務である。
そのため、今後の地域営農の展開に適合する畑地かんがい技術の確立と、あわせて円滑な末端施設の利用推進の啓発普及に資することを目的に畑地かんがい推進モデルほ場設置事業(R元~R5)を実施し、かん水調査等の結果を踏まえ、タマネギ、レタス、キャベツなどの野菜、小麦、テンサイ、豆類などの畑作物のかん水の目安(かん水指標)を作成する。
令和3年度の調査では、6~7月が寡雨で記録的な干ばつとなった。そのなかで、かん水効果を把握するために設定した試験区(タマネギ・レタス)において、乾燥期間における適期かん水の実施(タマネギ4回、レタス2回)により、タマネギの収量はかん水区(5,689kg/10a)が無かん水区(4,435kg/10a)より28%増収し、またレタスの収量についてもかん水区(3,471kg/10a)が無かん水区(1,914kg/10a)より81%増収する結果となり、かん水区で作物の増収効果が確認された。
露地栽培において、地域の土壌水分特性と作物の生育段階に応じた適正かん水量の指標設定は、畑地かんがい技術の確立にむけて重要である。
また、気象データからは、5~6月(=作物の播種・定植期~初期生育期に該当)が、畑地かんがいの必要性の高い期間と考えられ、畑地かんがいによる水分供給が有効な手段となることからも、今後も調査データの蓄積が必要である。
上記地区のほか、道内5地区(苫前、帯広かわにし、芽室びせい、斜里、美瑛)でも地域農業に適合した水利用技術の確立とその普及を目的にモデル事業を実施しており、その調査結果の報告について意見交換を行いました。
今後とも、本研究会を通じて、畑地かんがいの技術を普及していくこととしています。
<研究会の様子(オホーツク会場)>
(2)現地検討会
2日目は、畑地かんがいモデルほ場設置事業 網走川中央地区の試験ほ場を見学し、かん水による作物の生育状況について確認しました。