世界遺産
世界遺産とは、「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(世界遺産条約)」に基づいて作成される「世界遺産一覧表」に記載されている物件のことで、建造物や遺跡などの「文化遺産」、自然地域などの「自然遺産」、文化と自然の両方の要素を兼ね備えた「複合遺産」の3種類があります。
世界遺産条約は、「顕著で普遍的な価値(Outstanding Universal Value)」を有する遺跡や自然地域などを、人類全体のための世界の遺産として保護保存し、国際的な協力及び援助の体制を確立することを目的としています。
2023年10月現在、世界遺産一覧表には1,199件の世界遺産が登録されており、そのうち日本には文化遺産20件、自然遺産5件の計25件があります。
知床は2005年7月に自然遺産に登録されました。
区分 | 文化遺産 | 自然遺産 | 複合遺産 | 計 |
世界 | 933 | 227 | 39 | 1,199 |
うち日本 | 20 | 5 | - | 25 |
登録地の名称(都道府県) | 登録年月 |
白神山地(青森県・秋田県) | 1993年12月 |
屋久島(鹿児島県) | 1993年12月 |
知床(北海道) | 2005年7月 |
小笠原諸島(東京都) | 2011年6月 |
奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(鹿児島県、沖縄県) | 2021年7月 |
世界自然遺産の登録基準
世界自然遺産としての「顕著で普遍的な価値」が認められるためには、次の条件を満たす必要があります。
4つの評価基準(クライテリア)の1つ以上に適合すること
(1)自然美
最上級の自然現象、又は類まれな自然美・美的価値を有する地域を包含する。
(2)地形・地質
生命進化の記録や、地形形成における重要な進行中の地質学的過程、あるいは重要な地形学的又は自然地理学的特徴といった、地球の歴史の主要な段階を代表する顕著な見本である。
(3)生態系
陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。
(4)生物多様性
学術上又は保全上顕著な普遍的価値を有する絶滅のおそれのある種の生息地など、生物多様性の生息域内保全にとって最も重要な自然の生息地を包含する。
完全性の条件を満たすこと
顕著な普遍的価値を示すための要素がそろい、適切な面積を有し、開発等の影響を受けず、自然の本来の姿が維持されていること。
保護管理体制
顕著な普遍的価値を長期的に維持できるように、十分な保護管理が行われていること
世界自然遺産『知床』
知床は、評価基準の(3)生態系と(4)生物多様性が認められ、世界自然遺産に登録されました。
知床の生態系
知床は、北半球で海氷(流氷)が到来する最南端の海域です。
流氷にはアイスアルジーと呼ばれる植物プランクトンが含まれており、海氷が溶ける春の初期にブルーミング(大増殖)が起きます。
植物プランクトンは動物プランクトンの餌となり、さらにこれらは魚類の餌となります。
魚類は鳥類やアザラシ・トドなどの海棲哺乳類に食べられ、また、川を遡上するサケ科魚類は森にすむヒグマなどの動物に食べられます。
こうした食物連鎖によって知床の海、川、森はつながっています。
知床は、海氷を起点とする海洋生態系と陸上生態系の相互関係を示す顕著な見本です。
知床の生物多様性
知床は、季節海氷域でありながらも地理的には温帯域に位置する環境を反映し、陸域・海域いずれにおいても北方系の動植物と南方系の動植物が共存する特異な地域となっています。
餌資源の豊富さと生息地の多様さからヒグマが世界有数の高密度で生息しています。
渡り鳥の重要な中継地であるとともに、国際的に希少な種であるシマフクロウ・オオワシ・オジロワシなどの重要な繁殖地や越冬地となっており、これらの種の存続に不可欠な地域となっています。