消費生活相談事例03 友人を誘えば儲かる -ネットワークビジネス(マルチ商法)の誘惑
相談内容
友人(J)から「遊べるか。」と電話があった。
Jは「良い話なんだけどお前だから紹介したいんだよね。」「まあバイトみたいなもんだから」と言った。
Aが「何のバイト。」と尋ねると、Jは「流通だ、流通。」「絶対良い話だから来てくれない。」と会社事務所へ来るよう誘った。
Aは、Jとは仲が良かったので、会社の名称も商品のことも聞くことなく、特に疑問を持たずに行くことにした。
会社事務所で別の勧誘者Kが、会社のネットワークビジネスの概要の説明、商品の説明をした。
Kは、ネットワークビジネスの収入について「Mさんは車を買った、Oさんはマンションを買った。」「トップは何千万もいっているよ。」「最初から30万円を持ってきたのは今まで2人ぐらいかな。とりあえずあっという間に借金は返せる。だから消費者金融から借りても心配はない。」などと言った。
また、Kは、商品の説明として「フットバスは、水を入れて、足を入れてスイッチを押すと、体から毒が出て水の色が変わる。」「東京の美容室に貸す。」などと言った。
AとJ及び別の勧誘者Lの3人での話し合いとなった。Lは「30何万円かかるけど、どうすれば良いか悩んでるでしょ。」とAに言った。
Aが「30何万円も持っていないですよ。」と答えると、Lは「みんな消費者金融とかから借りてるから心配はいらない。借りたとしても権利収入が入ってすぐ返せるから。」と言った。また、消費者金融からの借入にあたっては「学生とは書かないで。」「バイト先に電話がいくけど、名前を言うだけだから大丈夫だよ。」「お金を借りる理由は、生活に困ったと書くと返すあてがないと思われるから、旅行と書いて。」などと、学生であるAに消費者金融からの借入方法を指導した。
Aが契約するかどうかで悩んでいたところ、Lは「ここで勝ち組になるか負け組になるか、わかりますよね。」「別にやめても良いけど、明らかに得な話だよ。」などとAを説得し続けた。Aは、会社の行うネットワークビジネスが純粋に良いものなのだと思ってしまい、近くの消費者金融から借り入れ、契約を締結した。Aは契約書面のコピーをもらっただけだった。
アドバイス
この事例は、連鎖販売取引、いわゆる「マルチ商法」といわれる販売方法です。
この販売方法は、特定商取引法の規制を受ける取引であり、この事例の場合には、次のような法違反があります。
(1) 勧誘に先立ち販売目的を告げることが義務づけられています。(北海道消費生活条例にも違反)
この事例の場合には、「良い話を紹介したい」と言って会社事務所へ連れて行き、ネットワークビジネスの勧誘を始めていることから、販売(連鎖販売取引)目的を隠しており、法違反となります。
また、統括者の名称や、フットバスという商品の種類についても明らかにしていません。
(2) 重要な事項について、不実のことを告げてはいけません。(消費生活条例にも違反)
商品の効能について、その根拠がないにも関わらず「水を入れて、足を入れてスイッチを押すと、体から毒が出て水の色が変わる。」などと、不実のことを告げています。
また、実際は収入が保証されているわけではないにも関わらず「あっという間に借金は返せる。だから消費者金融から借りても心配はない。」「借りたとしても権利収入が入ってすぐ返せるから。」と不実のことを告げています。
(3) 勧誘目的を告げないまま公衆の出入りできない場所で勧誘してはいけません。
電話等により、勧誘に先立って連鎖販売取引の契約の締結について勧誘する目的である旨を告げずに、公衆の出入りする場所以外の場所である会社事務所へ誘引し、連鎖販売取引の契約の締結について勧誘をしています。
(4) 知識、経験、財産の状況に照らして不適当な勧誘を行ってはいけません。
商品を購入する資金のない学生に対して勧誘行為を行い、契約を締結するために消費者金融からの借り入れを勧めています。また、その際「学生とは書かないで。」「バイト先に電話がいくけど、名前を言うだけだから大丈夫だよ。」「お金を借りる理由は、生活に困ったと書くと返すあてがないと思われるから、旅行と書いて。」などと、虚偽の記載を指示しています。
(5) 定められた事項を記載した、概要書面と契約書面を適切な時期に交付しなければなりません。
会社は、商品の種類及びその性能若しくは品質に関する重要な事項、商品名、商品の販売価格、得ることのできる特定利益に関する事項、特定負担の内容などを記載した概要書面を交付しなければなりませんが、これを交付していません。
また、会社は、契約書面を交付しましたが、定められた事項が記載されていませんでした。
連鎖販売取引の勧誘方法の特徴の1つとして、会員が他の会員を増やすために、良い商品であることや高収入であることばかりを強調する傾向があり、その結果、事実と異なることを告げるなど違法な勧誘になることも少なくありません。
また、販売のノウハウを持たない者が、他人を勧誘できる可能性は低く、法違反を行うことにより、勧誘者が逮捕される可能性もあります。連鎖販売取引の勧誘を受けた場合には、「絶対に儲かる」などと告げる事業者には注意し、契約するかどうかは、一度自宅に戻るなどしてから冷静に考えることが大切です。
重要
この事例の場合の契約の解除については、クーリング・オフの期間は契約書面を受け取った日(商品の再販売の場合は、この日と商品を受け取った日の遅い方の日)を含めて20日間です。
また、その期間を経過したとしても勧誘方法に問題がある場合には、クーリング・オフの期間が延びたり、特定商取引法や消費者契約法による契約の取消しをできる可能性があるほか、中途解約をすることができますので、お住まいの市町村の消費生活相談窓口や消費生活センターに相談してください。