○計画段階環境配慮書に係る知事意見 (平成27年8月25日) 1 総括的事項
(1)事業実施想定区域及びその周辺は、なだらかな宗谷丘陵が広がり、約1万年前の氷河時代の末期に形成された特徴的な地形である周氷河地形が国内で最も大規模かつ典型的に見ることができる重要な地域である。丘陵の上に生育しているササ草原等は特定植物群落に選定されているほか、自然林や自然草原をはじめとする自然度の高い植生や保安林などの重要な自然環境のまとまりの場が区域の大部分を占めるとともに、区域の北側に位置する宗谷岬は、オオワシやオジロワシなどの希少猛禽類をはじめとする多様な鳥類の渡りのルートや中継地としても重要な地域となっている。 区域の北西側は富磯などの市街地と著しく近接するなど、区域近傍には多数の住居や学校が存在している。また、区域の南西側には稚内市の水道水源である北辰ダムが隣接しており、区域はその集水域を含んでいる。 (2)本配慮書では、最大で総出力17万kWの風力発電所を設置する計画とした上で、事業実施想定区域の位置について、環境影響を可能な限り回避・低減する観点で、事業の実行可能性も踏まえて、複数案の設定、検討を行っているが、今後の事業実施想定区域からの絞り込みによる対象事業実施区域の設定、事業の規模、風力発電設備の配置及び構造・機種の検討に当たっては、区域の周辺に存在する住居等への騒音及び超低周波音や風車の影による重大な環境影響を及ぼさないよう十分な離隔距離を確保すること。また、上記の重要な自然環境のまとまりの場を対象事業実施区域から原則除外するとともに、希少鳥類の渡りや移動及び営巣への重大な影響を及ぼさないようにすること。特に、過去のバードストライクの発生情報からバードストライクが発生しやすいと思われる地形を有する場所においては、風力発電設備の設置を極力避けること。
(3)今後の検討に当たっては、2の個別的事項の内容を十分に踏まえ、専門家等からの助言を得ながら科学的・客観的な方法により調査及び予測を行い、各環境要素に係る重大な環境影響の程度を評価し、その結果を本事業の位置及び規模、風力発電設備の配置及び構造・機種の検討に反映するとともに、その経緯等についても、方法書に記載すること。
なお、検討の結果、重大な環境影響の回避又は十分な低減が可能なことを裏付ける科学的根拠を示すことができない場合は、対象事業実施区域の更なる絞り込みや事業の規模の縮小など、事業計画の見直しを行うこと。 (4)事業実施想定区域からの絞り込みの結果、既設や計画中の風力発電所との累積的影響が生じるおそれがある場合は、それらの区域等に関連する環境要素に係る累積的な影響についても調査、予測及び評価すること。
2 個別的事項
(1)騒音及び超低周波音、風車の影 事業実施想定区域の周辺には多数の住居や学校等が存在し、特に北西側は市街地と著しく近接しており、これらに対する騒音及び超低周波音や風車の影による健康影響を含む重大な環境影響が生じるおそれがあるため、1/3オクターブバンド音圧レベル(200Hz以下)や日影図の情報等に基づいた適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 (2)水環境
事業実施想定区域内には、稚内市の水道水源である北辰ダムの集水域が含まれるとともに、さけ・ます資源保護対策の保護水面である増幌川及びその支流があることから、土地改変による濁水や土砂の流出などによる影響を及ぼすおそれがあるため、区域から北辰ダムの集水域を除くとともに、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 (3)動物
事業実施想定区域内では、オオワシ、ミサゴ、ハイタカなどの希少猛禽類の飛翔が確認されているほか、モイマ山は、オオワシなどの渡りの中継地となっている。また、区域の西側では、専門家等により、オジロワシの営巣が確認されているほか、初冬期の増幌川では遡上するサケ等を餌とするため飛来する海ワシ類が多数確認されている一方、区域の北部にある既設の風力発電所では、オジロワシのバードストライクがこれまで複数回発生していることから、希少猛禽類の生息環境に対して著しい影響を及ぼすおそれが極めて高い。 このため、専門家等からの助言を得ながら、渡りを含む移動経路や生息状況等に関する詳細な調査及び予測を行い、バードストライクや営巣の阻害などの重大な環境影響の有無を評価すること。 (4)植物、生態系
事業実施想定区域内には、宗谷丘陵ササ草原及び東浦(宗谷丘陵)自然林といった特定植物群落、トドマツ-ミズナラ群落、エゾイタヤ-ミズナラ群落などの自然林を含む自然度の高い植生や保安林などの重要な自然環境のまとまりの場が存在しており、風力発電設備や搬入路の設置に伴う土地改変箇所の検討に当たっては、それらの範囲を避けるとともに、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 また、生態系に関する上位性注目種や典型性注目種等については、地域における生息環境に即した適切な種を選定するとともに、事業の実施による影響について、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 (5)景観
本配慮書では、景観資源である宗谷丘陵を点でのみ表示し、事業実施想定区域外に位置しているとしているが、方法書以降の図書では範囲として表示し、適切な方法で調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 (6)人と自然との触れ合いの活動の場
事業実施想定区域の北側には、宗谷丘陵のゆるやかな起伏を楽しむためのフットパスコースが整備されているが、工事車両の通行や施設の稼働など事業の実施に伴い利用性、快適性などに影響が生じることが想定されることから、これらについても適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 |