○計画段階環境配慮書に係る知事意見 (平成27年5月22日)1 総括的事項
(1)事業実施想定区域及びその周辺は、利尻・礼文の両島、サロベツ原野、抜海・稚咲内海岸などが利尻礼文サロベツ国立公園に指定され、サロベツ原野の中心部の高層湿原などがラムサール条約湿地に登録され保護されているほか、サロベツ原野、稚咲内砂丘林及び湖沼群などの特定植物群落、自然林、自然草原をはじめとする自然度の高い植生の区域が存在している。
(2)本配慮書では、最大で総出力80,000kの風力発電所を設置する計画とした上で事業実施想定区域の位置について重要野鳥生息地(IBA)区域や利尻山を眺望する景観に配慮する複数案を検討しているが、今後の対象事業実施区域の設定、事業の規模、風力発電設備の配置及び構造の検討に当たっては、上記の重要な自然環境のまとまりの場を対象事業実施区域から除外するとともに、人為的改変の影響を受け易いぜい弱な湿地・湿性環境を保全し、希少鳥類の渡りや移動への重大な影響を及ぼさないよう、離隔距離を確保すること。また、利尻礼文サロベツ国立公園である利尻島、抜海・稚咲内海岸、サロベツ原野などの自然景観の眺望に重大な影響を及ぼさないようにすること。 特に、、重要野鳥生息地(IBA)、希少鳥類の生息、湿性植生等の維持及び景観に対する重大な環境影響を及ぼすおそれが極めて高いため、検討の結果、重大な環境影響の回避又は十分な低減ができることを裏付ける科学的根拠を示すことができない場合は、対象事業実施区域の位置の変更及び事業の規模の大幅な縮小など、抜本的な事業計画の見直しを行うこと。
(3) 事業実施想定区域は既設の風力発電所と近接しているため、今後の環境配慮の検討にあたっては、関連する環境要素に係る累積的な影響についても調査、予測及び評価すること。
(4)本配慮書は、環境配慮の評価結果について記載の齟齬がみられるほか、誤記等が散見されるなど計画段階の環境配慮の結果を記載すべき図書として信頼に足るものとなっていない。
(5)対象事業実施区域の設定、事業の規模、風力発電設備の配置及び構造の検討に当たっては、科学的・客観的な調査、予測及び評価を行うとともに、その経緯等についても、方法書に記載すること。
2 個別的事項
(1)騒音及び超低周波音 事業実施想定区域内には事業場が存在し、また、区域の周辺には住居が存在しており、これらに対する騒音及び超低周波音による環境影響が生じるおそれがあるため、1/3オクターブバンド音圧レベルの情報等に基づいた適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
(2)地形 事業実施想定区域は、全域が砂丘・風紋などを要素として重要な地形である「稚咲内」に含まれており、土地改変による影響が懸念されるため、現存する砂丘・風紋などの範囲を避けた上で、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
(3)動物 事業実施想定区域は、重要野鳥生息地(IBA)に選定された区域を広範に含む上、夕来稚咲内鳥獣保護区と隣接し、ラムサール条約登録湿地のサロベツ原野やサロベツ鳥獣保護区とも近接しており、本区域の北側及び南東側ではオジロワシの営巣が確認されているほか、本区域を含む海岸線は海ワシ類の主な餌場とねぐらの移動ルートにもなっている。また、オオワシ、ハイタカ等の希少猛禽類の生息も確認されており、本区域の東側に近接するペンケ沼、パンケ沼などを含むサロベツ原野は、希少鳥類であるオオヒシクイ、マガンなどの渡りの中継地となっているとともに、本区域南側に近接する既設の風力発電設備ではオジロワシのバードストライクが数件発生している。
(4)植物 事業実施想定区域は、湿地・池沼と森林が複雑に組み合った生物多様性が非常に豊かで学術的価値の高い国立公園特別保護地区に隣接しており、風力発電設備の基礎工事等に伴う周辺地下水位の変化などによる湿地・湿性環境への影響が懸念されることから、可能な限り離隔距離を確保した上で、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
(5)生態系 事業実施想定区域内には、自然林を含む自然度の高い植生の区域などの重要な自然環境のまとまりの場が存在しており、風力発電設備や搬入路の設置に伴う土地改変箇所の検討に当たっては、それらの範囲を避けるとともに、適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
(6)景観 本事業は、幌延ビジターセンター、北緯45度モニュメント、サロベツ原野駐車公園、道道106号稚内天塩線などの眺望点からの利尻礼文サロベツ国立公園である利尻島、抜海・稚咲内海岸の眺望景観に重大な支障を及ぼすおそれがあることから、眺望景観への介在を避けるよう事業計画を見直した上で、適切な方法により調査及び予測を行い、景観に係る重大な影響の有無を評価すること。
(7)人と自然との触れ合いの活動の場 事業実施想定区域に隣接して北海道自然歩道のオロロン海道があり、工事車両の通行や施設の稼働など事業の実施に伴って生じる利用性、快適性の変化などが想定されることから、これらの影響についても適切な方法により調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。 |