環境影響評価法対象経過措置案件に係る知事意見
泊発電所3号機設置計画に係る知事意見
準備書に係る知事意見(H11.9.21)
1 周辺海域の冬季水温の鉛直分布が上層と下層で逆転している現象については、主要因が特定出来ないことから、温排水による影響を明確にするためにも、今後モニタリングを継続し、因果関係の解明に十分配慮していくこと。
2 土捨場後背地の沼には着目すべき貴重な植物が確認されていることから、沼の地形、水質の変化についてモニタリングを実施し、その生息環境の保全に努めること。
また、土捨場の緑化については、事前に十分な試験を行い、専門家の意見を踏まえた上で、在来種による緑化についても検討すること。
3 土捨場後背地の植生等への影響や自然景観への影響を軽減させるため、工事計画の詳細な検討においては、建設残土の有効利用など、捨土量の低減に努めること。
4 冷却水による卵・稚仔・プランクトンの取り込みなど、発電所の取放水による海生生物への影響については、未解明な部分が多く、取り込みの影響をより定量的に検討するには、より詳細なデータの蓄積が必要と考えられることから、継続して必要なモニタリングを実施し、知見を積み重ねるとともに、予測・評価の精度向上に努めること。
5 土捨場付近の堀株川河口周辺はミサゴが採餌に利用していることから、その採餌環境を保全するために、土捨場に残土を盛土するに当たっては、モニタリングを実施し、その結果に応じた適切な保全対策を行うこと。
6 仮設橋梁については、長期にわたって設置されるものであり、その設置場所が海水浴場の近傍となっていることから、景観等に与える影響を軽減するため、その構造、デザイン等について十分配慮するよう努めること。
また、仮設橋梁設置による環境への影響については、準備書では記載されていないが、この景観上の指摘や騒音の影響も含め、評価書において適切に検討すること。
7 堀株から岩内町にかけての海浜地は、汀線が著しく変化してきていることから、発電所施設の影響も含めて検証するため、継続的なモニタリングを実施すること。
8 泊発電所内の固体廃棄物焼却炉についてはダイオキシンが発生することも想定されることから、焼却炉の適正な管理に努めること。
京極発電所設置計画に係る知事意見
準備書に係る知事意見 (H11.10.6)
1 上部調整池等計画地近傍は、約1万2千年前がその形成起源とされるなど学術的にも価値が高い湿原群が隣接しており、大部分の湿原群の涵養域は保全されるものの、一部小湿原の表流水に変化が生じ、少なからず影響が想定される。このため、今後、計画の詳細検討段階においては、土捨場の位置の変更や上部調整池の形状等の変更など、可能な限り影響を回避・低減するよう十分な検討を行うこと。
また、当該小湿原の涵養域への影響が避けられないと判断された場合には、涵養水の集水方法や自然涵養形態により近づけた涵養方法について、十分な調査、試験を行い、万全を期した上で、保全対策を講ずることとし、当該小湿原の水位や植生の変化について、定量的な方法により、長期的にモニタリングを実施すること。
2 上部調整池等計画位置に関して、湿原群への影響などを勘案して変更が繰り返されてきた経緯及び湿原保全区域の設定について、詳細な説明が記載されていないことから、評価書においてこれらの経緯等を適切に記載すること。
3 本計画に伴い道路拡幅を予定している渓谷川上流の岩崖地においては、エゾマンテマなどの貴重な植物を移植することとしているが、この岩崖地では、その他イワオウギなど貴重な植物が集中し、当該地の特徴をよく表した小さな生態系ともみることができる貴重な植生であることから、この岩崖植生の改変を回避するよう計画を検討すること。
また、この岩崖植生については、現状調査が十分には実施されていないことから、事業実施による影響を把握するためにも、事業実施前に、方形区調査を実施し、その結果と比較できるよう同一の方形区で、被度などの定量的な項目を含む同一の調査手法により、モニタリングを実施すること。
4 本計画地及びその周辺においては、貴重な猛禽類が多数確認されており、オオタカなどの採餌場所としての利用が認められ、特にハチクマについては、計画地周辺での活動密度が高いことから、今後ともモニタリングを継続するとともに、オオタカ、ハチクマなどについては、飛翔記録をもとに利用区域をメッシュ解析し、事業の実施前、実施中及び完成後の生息状況を定量的に検証できるよう、また、ハチクマについては、採餌行動の記録にも十分注意してモニタリングを実施すること。
5 クマゲラについては、改変区域から離れた周辺にも生息環境が分布していることが示唆されたが、事業の実施により、採餌環境の一部が消失した場合、実際にどのように行動圏や主たる採餌木の分布が変化するかは、不確実な点が多いことから、今後、モニタリングを通して明らかになるよう努めること。
6 分断化、孤立化が危ぶまれている石狩西部のエゾヒグマ個体群については、本事業の実施により移動経路等が確実に分断されるとは言えないまでも、どのように変化するかなど具体的なことは不明な点が多く、また、工事中は、工事区域外へと出没する可能性があることから、今後、事業実施に当たっては、改変域の最小化などの保全対策に努めるとともに、計画地周辺を含めたエゾヒグマに関する情報収集やモニタリングを行い、生息状況の的確な把握に努めること。
7 エゾサンショウウオについては、事業実施前に生息状況の確認調査を実施し、改変区域内で卵塊や個体を確認した場合は、可能な限り当該箇所の改変の回避を検討すること。また、生息箇所がやむを得ず消失することになり、卵塊、個体を移動させる場合には、その移動先における本種の生息密度が高くなることにより定着しないこともあり得ることから、その生息環境を慎重に選定するよう十分配慮すること。
8 下部調整池付近で確認されたヤマベについては、地付きのものが繁殖しているのであれば地域的に重要と考えられることから、今後とも引き続き繁殖状況など本種の生息の把握に努めること。
9 下部調整池の建設及び放流水温の上昇による河川生物群集への影響については、未解明な部分が多く、具体的な影響を検討するに当たっては、更に知見を集積することが重要であることから、今後、河川の底生動物、付着藻類などの生物群集について、事業実施前後の定量的な検証ができるよう必要なモニタリングを実施し、予測、評価の精度向上に努めること。
10 湿原内の池塘で確認したとするイイジマルリボシヤンマについては、分布的に重要な昆虫であるが、標本がなく、同定の不確かさがあることから、今後、個体数密度なども含めて調査を実施し、事実を明らかにするとともに、本種が確認された湿原については、厳重に保全するため適切な保全対策及びモニタリングを実施すること。
11 昆虫類について、上部調整池計画地においては、見つけ取りなどの採集調査は行われているが、ベイトトラップ調査は行われておらず、地表徘徊性昆虫類の現状把握が不十分であることから、今後、当該調査を実施し、その結果を踏まえ必要な対策を講ずること。
12 ダム築造の岩石採取のため山地斜面から採石する計画については、採石後には、広範な岩盤法面が露出することになり、景観への影響は、その後の修景緑化の成否によるところが大きいことから、今後、緑化事例の収集や十分な緑化試験の実施に努め、景観に十分配慮した緑化を確実に実施するとともに、景観や植栽について、事業の各段階で種々検証ができるようモニタリングを実施すること。
13 採石場や上部調整池の形状については、構造上の安定性の確保など景観上の配慮が難しい部分はやむを得ないが、上部調整池縁辺に配置する盛土の形状や採石場の平坦部などについては、既設林道からの景観への影響を可能な限り低減させるため、現状の地形や起伏に配慮した形状、配置とするよう努めること。
14 上部・下部調整池の建設による富栄養化の予測については、従来から使用されてきた欧米の湖沼データと比較したボーレンバイダーの図を用いた予測がなされており、現在の知見ではこの図を使用することは適当ではないことから、評価書において適切に修正すること。
また、水温変化及びSSの予測モデルにおいて使用した結氷モデルについては、十分な説明がなされていないことから、評価書においては、適切に記載すること。
15 本計画地及びその周辺においては、湿原や渓谷があり、貴重な動植物も数多く確認されていることから、今後、評価書を取りまとめるに当たっては、生態系の保全について、上位性、典型性、特殊性に関して、例えば、猛禽類、ヤナギ群落、ハルニレ群集、湿原、岩崖植生などに注目するなどして、それらへの影響や保全対策等を取りまとめること。
また、それらの評価については、後の検証が可能となるように、消失割合など可能な限り具体的な数値を用いるなどして、適切な事後のモニタリングについても計画すること。
16 モニタリングの実施計画については、事業の実施前、実施中及び完成後における各項目毎にその調査方法と調査期間について、具体的に示すとともに、調査結果の公表の方法についても明らかにすること。
一般国道40号音威子府バイパス(音威子府村~中川町) に係る知事意見
準備書に係る知事意見 (H11.10.7)
1 植物について、現状調査の結果、予測評価対象種のほかに環境庁公表の「植物版レッドリスト」の掲載種が確認されていることから、これらの種に配慮すること。
また、地質に係る概況調査の結果、分布が確認されている蛇紋岩地帯においては、当該地域の蛇紋岩植生を特徴づけるテシオコザクラ、オゼソウなど、貴重な植物の生育の可能性があること、さらには、当該地域は、カツラの自生北限域と考えられることから、今後はそのような道内において隔離的に分布する種や分布限界にある種など地域の特性を踏まえた注目すべき種(以下「地域特性種」という。)についても十分配慮すること。
2 計画路線近傍において確認されているイチゲイチヤクソウについて、本種は、植物版レッドリストで「絶滅危惧IA類」に分類されており、生育可能な環境も限られていることから、今後の路線位置の選定や工事の実施に当たっては、本種の生育環境に影響を与えないよう十分配慮するとともに、工事中及び供用後における生育状況のモニタリングを行い、生育環境の保全に努めること。
3 計画路線は、北海道大学農学部附属演習林中川地方演習林など、自然豊かな地域を通過することから、詳細設計の段階においては、動物の移動経路を確保することはもとより、実行可能な範囲内で、当該地域の分断を低減し得る十分な保全対策を講ずること。
4 調査対象区域内において営巣等が確認されているオジロワシ及びクマタカについて、これらの種の繁殖期における工事騒音などによる影響が懸念されることから、準備書において実施するとしている調査を確実に行うとともに、その結果を踏まえ、専門家の意見を聴くなどして、具体的な施工方法を検討するなど、必要に応じ適切な措置を講ずること。
5 計画路線に近接した渓流では、当該地域が分布の北限域と考えられるムカシトンボの幼虫が確認されていることから、今後の路線位置の選定や工事の実施に当たっては、本種の生息環境に影響を与えないよう十分配慮するとともに、工事中及び供用後における生息状況のモニタリングを行い、生息環境の保全に努めること。
6 動物と車両との衝突事故を未然に防止するという観点から、事故の発生時においてその原因解明を行い抜本的な対策を講ずる必要があること、また、将来、動物と車両の事故発生に係る予測手法の確立につながるよう、今後とも適切な記録の蓄積に努めること。
7 建設工事の実施において、残土、伐木等については、できるだけ発生を抑制するとともに、資源として有効利用に努めること。
地域高規格道路 旭川十勝道路(中富良野町~富良野市)に係る知事意見
準備書に係る知事意見 (H11.10.7)
1 植物について、現状調査の結果、予測評価対象種のほかに環境庁公表の「植物版レッドリスト」の掲載種が確認されていることから、これらの種に配慮するとともに、道内において隔離的に分布する種や分布限界にある種など地域の特性を踏まえた注目すべき植物(以下「地域特性種」という。)についても十分配慮すること。
2 道路の建設により、野生動物の生息地が分断される懸念があることから、必要に応じ移動経路についての調査を実施し、詳細設計の段階においては、移動経路が十分確保されるよう、動物種に応じた適切な保全対策を検討すること。
また、動物と車両との衝突事故を未然に防止するという観点から、事故の発生時においてその原因解明を行い抜本的な対策を講ずる必要があること、また、将来、動物と車両との事故発生に係る予測手法の確立につながるよう、今後とも適切な記録の蓄積に努めること。
3 建設工事の実施において、残土、伐木等については、できるだけ発生を抑制するとともに、資源として有効利用に努めること。
一般国道39号北見バイパス(北見市~端野町)に係る知事意見
準備書に係る知事意見 (H11.10.7)
1 植物について、現状調査の結果、予測評価対象種のほかに環境庁公表の「植物版レッドリスト」の掲載種が確認されていることから、これらの種に配慮するとともに、道内において隔離的に分布する種や分布限界にある種など地域の特性を踏まえた注目すべき植物(以下「地域特性種」という。)についても十分配慮すること。
2 道路の建設により、野生動物の生息地が分断される懸念があることから、必要に応じ移動経路についての調査を実施し、詳細設計の段階においては、移動経路が十分確保されるよう、動物種に応じた適切な保全対策を検討すること。
また、動物と車両との衝突事故を未然に防止するという観点から、事故の発生時においてその原因解明を行い抜本的な対策を講ずる必要があること、また、将来、動物と車両との事故発生に係る予測手法の確立につながるよう、今後とも適切な記録の蓄積に努めること。
3 建設工事の実施において、残土、伐木等については、できるだけ発生を抑制するとともに、資源として有効利用に努めること。
小樽都市計画道路1・3・1小樽山手通及び余市都市計画道路1・3・1余市望海台通(余市町~小樽市間 自動車専用道路)に係る知事意見
準備書に係る知事意見 (H11.9.3)
1 騒音については、小樽市新光町地区において予測値が環境保全目標を超えることから、当該地区の住環境ができるだけ損なわないように、準備書の評価結果を踏まえ、今後、さらに影響を低減すべく適切な保全対策を講ずるとともに、景観にも配慮しながら、現存の植生を活用したり在来種による植栽に努めること。
2 植物については、予測評価対象種のほかに環境庁公表の「植物版レッドリスト」掲載種が確認されていることから、これらの種に配慮するとともに、道内において隔離的に分布する種や分布限界にある種など地域の特性を踏まえた注目すべき植物(以下「地域特性種」という。)についても十分配慮すること。
また、計画路線の周辺の現状調査に比べ、計画路線内において直接改変を受ける可能性がある区域に設定された踏査ルートや方形区、帯状区調査については、必ずしも十分なものといえないと考えられ、当該リスト掲載種や地域特性種が、さらに当該区域に生育している可能性があることから、今後も引き続き調査を実施していくこと。
3 着目すべき鳥類のうち、ワシタカ類の営巣確認に関する調査については、その調査時期や回数から必ずしも十分なものとはいえないと考えられること、また、ワシタカ類やカワセミ、ヤマセミに係る各種の調査結果において、巣や巣穴が確認されている事実は、計画路線及びその周辺において営巣に適した環境が存在し、潜在的な営巣の可能性を示すものと考えられることから、今後も継続的にモニタリングを実施していくこと。
4 動物と車両との事故対策については、衝突事故を未然に防止するという観点から、動物の移動経路の確保に十分配慮するとともに、事故発生時においてその原因解明を行い抜本的な対策を講ずる必要があること、また、将来、動物と車両との事故発生に係る予測手法の確立につながるよう、今後とも適切な記録の蓄積に努めること。
5 建設工事の実施において、残土、伐木等については、できるだけ発生を抑制するとともに、資源として有効利用に努めること。