たばこをやめたい方へ
喫煙者の6~7割程度の人は、たばこを止めたいという意志を持っているといわれています。
しかし、禁煙を開始すると、多くの人はイライラ、集中力低下、落ち着かない、眠気などの離脱症状や、吸いたいという欲求(精神的な喫煙欲求)に襲われ、短期間に再喫煙してしまうといわれています。
しかし、これらの離脱症状と喫煙欲求にうまく対処することで、禁煙日数を延ばしていくことは可能です。例えば、禁煙に伴う離脱症状の軽減方法として、ニコチネルTTS(通称、ニコチンパッチ)、ニコレット(通称、ニコチンガム)と呼ばれるニコチン製剤(医薬品)を用いたニコチン代替療法(離脱症状の緩和治療)があります。
貼り薬(ニコチネルTTS)は、禁煙外来を実施している医療機関で医師の診察を受け、依存性や喫煙本数が保険診療の基準に該当していれば医療保険を使って処方を受けることが可能です(喫煙年数が短く、保険診療の基準に該当しない場合は全額自己負担の自由診療になります)。一方、ガム(ニコレット)は、薬局で薬剤師の指導の元で購入することが可能です。
ニコチン製剤の貼り薬やガム(タブレット)を用いても、喫煙者100人が100人ともニコチン離脱症状を緩和させられるかというとそうでもありません。やはり個人差があり、少量の使用量で禁煙継続に成功した人もいますが、通常の使用量でも禁煙できず再喫煙する人もいます。
禁煙を試みる多くの喫煙者はニコチン離脱症状で禁煙継続の決意が揺らぎます。なお、この離脱症状は多くは禁煙継続2、3日を過ぎる頃から治まっていくといわれています。その期間を乗り切ると、あとはそれほど苦しまずに禁煙を継続することが可能と思われます。
精神的な喫煙欲求に対する治療薬は現時点ではありません。多くの喫煙者は一人で我慢するとか、水を飲んだりなどして気を紛らわす方法を用いたり、あるいは禁煙支援者あるいは禁煙に成功した人からの励まし・助言などを受けながら、各自この喫煙欲求の克服に挑戦しながら禁煙日数を延ばす工夫をしています。
喫煙欲求は禁煙日数を伸ばしていくと和らいでいきますが、ときどき欲求が高まることがあります。例えば、酒の席で酔ったときや仕事でストレスを感じたときなど、我慢できずに再喫煙してしまうことが多いのもこの精神的な欲求の高まりが影響しているといわれます。
特に禁煙を開始して間もない時期は、喫煙者との飲酒・会席の場は注意してください。喫煙する人の姿を見ると、それが刺激となって喫煙欲求が高じるおそれがあります。
なお、このような飲食の場面で、隣の人が喫煙している様子を見ても吸いたい気持ちが発生しなければ、喫煙欲求を克服したものと解釈できます。
禁煙に成功した喫煙者は平均3~4回、7~10年の期間を要することが多いといわれています。禁煙を目指し何度も挑戦し続けることで大切です。禁煙は、再喫煙や禁煙中断で失敗することが普通です。一発で禁煙に成功する人は少ないです。
<禁煙による身体への効果として挙げられている主な項目>
・ 禁煙すると、数日で血圧や脈拍、血中の酸素濃度などが改善するほか、味覚や嗅覚などの食に関する知覚が良くなる(元に戻る)。
・ 禁煙が2週間以上続くと、循環機能や肺機能が改善し、時間の経過とともに体力が戻ったり、痰や息切れが改善する。また、風邪やインフルエンザなどの呼吸器系の感染症にかかりにくくなる。
・ 禁煙が1年続くと、虚血性心疾患の超過リスクが半減する。そして10~15年後には肺がんをはじめ、喫煙関連疾患のリスクがたばこを吸わない人のレベルに近づく。
・ 禁煙すると、ニコチンによる身体の負荷(一種のストレス状態)が軽減されるのと、食事が美味しく感じるようになったり、口にたばこがないため口を動かし続けられるため、つい食べ過ぎて体重が増加するといわれている。しかし食べる量を気をつけていれば、平均2kg前後の体重増にとどまるといわれる。禁煙すると際限なく太るのでなく、本来のその人の健全な体重に戻ると考えれている。
・ 35歳以下の喫煙者では、1ヶ月間禁煙すれば、心臓の機能が喫煙しない身体本来の状態にもどることが報告されています。
<禁煙の継続により生まれる身体、生活行動、家庭環境などの変化>
・ 息切れがしなくなった。
・ 食べ物の味や香りがよくわかるようになった。
・ 空気の匂いがわかるようになった。
・ 衣服や口臭、頭髪からたばこ臭がしなくなった。
・ 歯肉の色がよくなった。
・ 肌のつやがよくなった。
・ 咳や痰がでなくなった。
・ 風邪を引きにくくなった。
・ 喫煙室・喫煙区を探し、施設内や野外をウロウロすることがなくなった。
・ 公共交通機関での長時間の移動も苦痛でなくなった。
・ たばこの自動販売機を探すこともなくなった。
・ 会議中、喫煙欲求に気を取られることなく議論に専念できるようになった。
・ 灰皿やライターなどを探し、脇見運転をしなくなった。
・ 通院先の医師から禁煙するように説教される苦痛がなくなった。
・ たばこの購入費が無くなり、小遣いに余裕が生まれた。
・ 受動喫煙による家族の健康への不安がなくなった。
・ 禁煙したことで、子どもも喫煙しない意識が高まった。
・ 家族から煙たがられることが少なくなった。
・ 部屋の壁紙やカーテンなどがたばこのヤニや臭いで汚れず、転居の際、改修費用や清掃費用を要求されなくなった。