ダニ媒介感染症について

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ダニ媒介感染症について

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ダニ媒介感染症の流行状況はこちら

👉http://www.iph.pref.hokkaido.jp/topics/tick-borne_diseases/tick-borne_diseases.html

(北海道立衛生研究所)

ダニ媒介感染症の概要

 マダニはライム病・回帰熱・日本紅斑熱・ダニ媒介脳炎・重症熱性血小板減少性症候群(SFTS)などの病気の原因となる病原体を保有していることがあり、咬まれることでこれらの病気に感染することがあります。北海道内で過去に患者が確認されている主な病気の概要は次の表のとおりです。

  病名  潜伏期間                 主な症状     治療薬
ライム病 12~15日程度 発熱(微熱であることが多い)、倦怠感、慢性遊走性紅斑、稀に心筋炎・髄膜炎  テトラサイクリン系の抗菌剤 
回帰熱 7~10日程度 発熱(39度以上)、筋肉痛、関節痛、倦怠感等  テトラサイクリン系の抗菌剤
ダニ媒介脳炎  7~14日程度 発熱、筋肉痛、麻痺、意識障害、けいれん、髄膜炎、脳炎等  -
  • 上表の3疾病は、感染症法上の四類感染症(人から人への感染はほとんどないが、動物、飲食物等の物件を介して感染するため、動物や物件の消毒、廃棄などの措置が必要となる感染症)に該当し、インフルエンザのように容易に人から人に感染して広がるものではなく、水や空気などを介して伝染することもありません。
  • ダニ媒介脳炎は、ウイルスが混入した生乳を飲んで感染した例がヨーロッパで知られていますが、ウィルスは72℃10秒で死滅するため、殺菌処理された市販の牛乳から感染することはありません。

マダニとは

  • マダニは、森林や草地など屋外に生息する比較的大型のダニで、食品等に発生する「コナダニ」や、絨毯や寝具に発生する「ヒョウヒダニ」など家庭内に生息するダニとは全く種類が異なります
  • マダニは、ほ乳類や鳥類などの動物の血液(体液)を吸って生きています。
  • マダニは、卵→幼虫→若虫→成虫の順に発育し、幼虫・若虫・成虫ともに吸血します。
  • 北海道でヒトから吸血するのは、主にヤマトマダニとシュルツェマダニの2種類で,雌の成虫が吸血します(雄の成虫やシュルツェマダニの若虫もごく希に吸血します)。
  • これら2種類は道内に広く分布しますが、ヤマトマダニは利尻・礼文・天売・焼尻島と高山などの寒冷地には分布せず、シュルツェマダニは北海道南部の低地(主に渡島・檜山地方)ではきわめて希です。そのほか大部分の地域では2種類が同じ場所に生息しています。
  • 草原や林内などに広く生息していますが、林道とけもの道の交点付近などは生息密度が高く、屋内、住宅街や公園内、畑地や牧草地などヒトの管理の行き届いた場所には、ほとんど生息していません。
  • 両種とも成虫は,キツネ・ウサギ・ヒグマ・シカ・ヒトなどの中~大型のほ乳類を吸血します。シュルツェマダニの幼虫と若虫は、これらのほかにネズミ類などの小型のほ乳類や鳥類からも吸血します。
  • 両種とも春の雪解け直後から出現し,シュルツェマダニは7月まで、ヤマトマダニは10月頃まで見られますが、ヒトの刺症例は5~7月に多くなっています。
  • これら2種類の成虫は,枯れ枝や植物の葉の先端などで吸血源となるヒトや動物が通りがかるのを待ち伏せしています。また、動物の呼気(二酸化炭素)に誘引されます。
  • 動物やヒトの体に乗り移ると、蚊の様にすぐに刺すのではなく、吸血に適した場所(皮膚の柔らかい場所を好む)を探して身体上を歩き回り、場所が決まると口器を刺して吸血をはじめます。
  • 吸血を始めると口器からセメント質を分泌し、1日もすると口器の周りをしっかりと固めるので、ダニの体を引っ張っても取れなくなります。吸血期間は一週間から10日間に及びます。
  • 吸血が終わると、セメント質などを溶かして自分から脱落します。脱落後しばらくすると、落ち葉の下などで産卵します。

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(上:葉の先端で、動物を待ち伏せするシュルツェマダニ、下:シュルツェマダニ(メス)拡大)
 写真提供:北海道立衛生研究所

予防方法

  • マダニに咬まれないようにすることが重要です。特にマダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性が高まります。
  • 草むらや藪・森林などマダニが多く生息する場所に入る場合には、長袖・長ズボン(シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や長靴の中に入れる、または登山用スパッツを着用する。)
  • 足を完全に覆う靴(サンダル等は避ける)、帽子、手袋、首にタオルを巻くなど、肌の露出を少なくすることが大事です。
  • 服は、明るい色のもの(マダニを目視で確認しやすい)や化学繊維素材のもの(マダニがつきにくい)がお薦めです。(※野外活動用の防水透湿素材のカッパの上下など。)
  • 草むらや藪・森林などの場所で、長時間地面に直接寝転んだり、座ったり、服を置いたりするのは止めましょう。
  • 首にかけるタオルや脱いだ上着などは直接地面に置いたり木にかけたりせず、出来るだけバックの中などにしまうようにしましょう。
  • DEET(ディート)という成分を含む虫除け剤の中には服の上から用いるタイプがあり、補助的な効果があると言われていますが、マダニを完全に防ぐわけではありません。虫除け剤を過信せず、様々な防護手段と組み合わせて対策を取る必要があります。
  • 屋外活動後は、すぐに入浴し、体や頭をよく洗い、新しい服に着替えましょう。
  • 脱いだ衣服はすぐに洗濯するか、ナイロン袋に入れて口を縛っておきましょう。
  • マダニに咬まれていないか確認してください。マダニは比較的やわらかい部位の皮膚に咬みつきます。特に、わきの下、足の付け根、手首、膝の裏、胸の下、頭部(髪の毛の中)などがポイントです。咬まれた直後は痛みやかゆみなどの自覚症状がなく、気づかないことも多いと言われます。
  • 犬や猫などの動物にダニが付くことがあります。除去には、目の細かいクシをかけると効果的です。ダニ駆除薬もありますので獣医師に相談してください。

マダニに咬まれたら

  • マダニ類は体部をつまんで引っ張ると口器がちぎれて皮膚内に残って化膿したり、マダニの体液を逆流させてしまったりする恐れがありますので、医療機関(皮膚科等)で処置(マダニの除去、洗浄など)をしてもらってください
  • マダニに咬まれた後、数週間程度は体調の変化に注意をし、発熱、食欲低下、おう吐、下痢等の症状が認められた場合は医療機関(内科等)で診察を受けてください。受診の際は、いつ、どこを咬まれたか、山などに行ったかを医師に伝えてください。

ダニ媒介脳炎について

ダニ媒介脳炎は、ウイルスを保有するマダニに刺咬されることによって感染する疾患です。ダニ媒介脳炎ウイルスはヨーロッパ亜型、シベリア亜型及び極東亜型に分類されます。
日本では1993年以降、北海道において発生が確認されています。

○病原体 フラビウイルス科フラビウイルス属に分類されるダニ媒介脳炎ウイルス

○感染経路 ヒトへの感染は主にマダニの刺咬によるが、ヤギの生乳の飲用によることもある。

○潜伏期 7~14日

○治療と診断

(1)臨床症状:

ヨーロッパ亜型による感染では、そのほとんどが二相性の経過をたどります。第一相では発熱、頭痛、眼窩痛、全身の関節痛や筋肉痛が1週間程度続き、解熱後2~7日間は症状が消え、その後第二相には、痙攣、眩暈、知覚異常、麻痺(まひ)などの中枢神経系症状を呈します。致死率は1~2%、回復しても神経学的後遺症が10~20%にみられるといわれています。

極東亜型による感染では、ヨーロッパ亜型のような二相性の病状は呈しませんが、極東亜型に感染した場合、徐々に発症し、頭痛、発熱、悪心、嘔吐が見られ、さらに悪化すると精神錯乱、昏睡(こんすい)、痙攣および麻痺などの脳炎症状が出現することもあります。致死率は20%以上、生残者の30~40%に神経学的後遺症がみられるといわれています。

シベリア亜型に感染した場合も徐々に発症しますが、その経過は極東亜型と比較して軽度であり、脳炎を発症しても麻痺を呈することはまれです。その致死率は6~8%を超えることはないと報告されています。しかしながらシベリア亜型と進行型慢性ダニ媒介脳炎との関連が示唆されており、進行性慢性ダニ媒介脳炎では1年を超える長期の潜伏期間あるいは臨床経過をたどります。

(2)診断:血液、髄液から病原体の検出や病原体遺伝子の検出、特異的IgM抗体の検出あるいは急性期血清から回復期血清への特異的IgG抗体上昇の検出

(3)治療:対症療法

医療機関の皆様へ

 ダニ媒介感染症が疑われる患者を診察したときは、道立衛生研究所や国立感染症研究所などで行政検査が可能な場合があります。検査についてのご相談は、最寄りの保健所までお問い合わせ下さい。

ダニ媒介感染症のPOINT解説

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新たなダニ媒介感染症について

○ 2021(令和3)年9月に、北海道において、マダニが媒介する新たな感染症の原因ウイルスが発見され、エゾウイルスと命名されました。

○ 2014(平成26)年から2020(令和2)年までの7年間に少なくとも7名の感染者が発生していたことが判明し、野生動物にも感染していたことから、北海道にウイルスが定着していると示唆されています。道では、これらのダニ媒介感染症について注意喚起や情報収集を行うとともに、厚生労働省と連携して調査研究を推進しています。

○次のリンクから詳細をご覧ください。

 新たなダニ媒介感染症について

リンク(厚生労働省ホームページ)

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